ホーム incube 「僕もあれがやりたかったのに」という後悔はしたくないから:株式会社人機一体

「僕もあれがやりたかったのに」という後悔はしたくないから:株式会社人機一体

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「ロボットの本質的な価値は、人間とのコミュニケーションや人間の真似ではなく、人を超える力学的機能にある」という考えを貫き、人型重機によって世界中からフィジカルな苦役をなくそうと研究・開発に取り組む株式会社人機一体。社員第1号として入社したソン ナンナンさんは、代表を務める金岡博士とロボットを見て「この組み合わせは絶対間違いない」と確信したという。
「あまねく世界からフィジカルな苦役を無用とする」ために、人が自由自在に操れて身体の能力を拡張できるロボットとプラットフォームを開発する。

金岡 ソンと初めて会ったのは、「ニコニコ超会議」の会場ですね。展示するロボットにトラブルがあって技術サポートに電話 をしたら、ソンが来てくれた。

ソン 当時は、人機(人機一体社の略称) のロボットに使われている部品メーカーに勤めていました。マーケティング部で、自社の製品が使われた最近の事例や面白い話題を調べていたときにたまたま見て、人機 のことは知っていました。金岡先生からサポート依頼があったことを、技術サポートに所属していた友人が「これはソンが絶対に好きだろう」と教えてくれたんです。人機のロボットを実際に見てみたくて、彼か ら無理やり仕事を奪ってサポートに行ったんです。

金岡 終電ギリギリまで一緒にがんばってくれて、トラブルを解決することができました。その時が初対面でしたが、極限状態で一緒に働いて課題を解決したことで、この人が人機に来てくれたら、人機は強くなると確信しました。でも、人を私の夢に巻き込んで、人生を左右していいのかな、という思いがいつもあるので、私はあまり強 く誘うことはできないんです。「来てほしいんだけどなあ.」というオーラを出す。

ソン そうでしたね。僕も最初は会社を辞めるとまでは考えておらず、今後も協力し たいな、という程度でした。でも、もともと大学.大学院でメカトロニクスを専攻していてロボットは好きでしたし、新しい技術を学んだり実際にものを作ったりする仕 事をしたいなと考えるようになって。人機ならそういうことができるだろうと思って転職を決意しました。

金岡 私はずっと1人でやっていましたから、それに慣れていたし、それが当たり前だと思っていました。ソンに技術者として入ってもらったことで、人に協力してもらう、チームとして一緒にやるというのはこういうことか、と改めて気づきましたね。 ロボット開発を加速するためには、もっと 積極的に人を採らないといけないな、と思えるようになった。これが、ソンが来てくれて起きた一番大きな変化ですね。「巨大ロボットを作る」という 自分の仕事を誇れるか

ソン 先生から事前に聞いていた仕事の内容は期待通りでした。ロボットを作るためには部品選定、設計、プログラミング、組立等、本当にいろいろなことをしないといけないのですが、僕は1つのことに集中してやるよりも、いろんなことに手を出したいんです。ベンチャーってそういう機会が 多いと思うんですよね。こういうことを解 決しないといけないんだけど、誰の仕事っていうのが決まっていない。それを自分から掴みにいくことができるんです。

金岡 ロボットを作るというのはいろいろな知識の寄せ集め、「インテグレーション」 なので、自分の専門や得意分野というのがあったとしても、他のところを知っているのと知らないのとでは、インテグレートし たときの出来が違う。例えば、部品選定して設計して、と順序良く進むわけではなく、部品選定のためには設計の知識が必要で、設計のためには部品選定の知識が必要。全てが関連している。

ソン 僕の専門はメカトロニクスで、それ自体がいろいろな要素を含んでいます。なので、知識は広く浅くもっています。必要になったら深く調べればいい。

金岡 それから、ロボットを作るからには、 ロボットへの夢を共有できる人と一緒に仕 事をしたいですね。ソンはロボットオタク 的にロボットが好きだ、というのがベース にあると思うんですが。それに加えて「こ ういう場面にロボットがあったらいいよ ね」「そのロボットができたら確かにすご いよね」という思いに心から共感できる人。 機械に対する親和性、憧れ……そこに自ら の人生を託せるかどうか。

ソン それって、自分で作ろうとしている ものを信じている、心から好きだと言える、 ということなんじゃないでしょうか。自分 の会社の製品がそんなに好きじゃない、というのは、ベンチャーで働くには致命的だ と思います。 夢を夢のままにしない。会社を、 自分の夢を叶える土台にする

金岡 今のところ会社の顔として前に出て いるのは私だけです。今はそれでいいので すが、それでは「層が薄い」んですよね。 私のキャラクターだけで保っているのだと したら、それは単に「私」であって、人機 という「チーム」の力ではない。会社としての強さを出すには、やはり層の厚さが重 要になってくる。だから、技術に深く関わっ ているソンがもう一歩踏み出して、自分の 名前で仕事ができるようになってくれたら、 と思っています。「人機にはソンという技術 者がいて、彼がこんなすごいロボットを作っ たんだよ」と言える、言われるようにしたい。

ソン 確かに、それはやりたいですね。「すごいものを作っているな、僕もこれに参加 できるんだ」と思って人機に入りましたか ら。それを、もっといろんな人に知ってほし いという思いはあります。数年後に成功し て「これは『俺が』作ったんだぞ」と言えるのが、ベンチャーの魅力だと思いますね。

金岡 それですよ。だってね、悔しいですよ? 誰か他の人が巨大ロボットを完成させて大喜びしている横で「ああ、僕も作りたかったのにな」って指をくわえて見てい るのは。巨大ロボットを最初に実用化するのは我々です。だから、そこに関わって「俺 作ったんだ」と言いたい人は人機に来るより他にないですね。今の人機は、まず私の夢があって、そ れをみんなで実現するために存在していま す。でも、その過程で、ソンが自分の名前 で仕事ができるようになったら、人機を踏み台にして、さらに大きな自分の夢を叶えればいいんです。

ソン 確かに、今は先生の夢に乗っかっている、とは思います。先生はいつも「社員には自分を超えてほしい」と言っているので、僕もそういうことを見つけていきたい です。

金岡 ソンに限らず、人機の人たちにはみ んな、そういうことを考えておいてほしい ですね。人機が10年生き延びれば、人機でできることは、今は想像できないほど広がっているはずですので。

(取材・構成 磯貝 里子)

ソン ナンナン さん プロフィール
中国生まれの日本育ち。1999年にカナダへ移住し、ウォータールー 大学でメカトロニクスを専攻、修士号を取得。2012 年、再度日本 に移住し日本ナショナルインスツルメンツ株式会社に入社、技術と マーケティングを担当した。2015年に金岡博士と出会い、2016 年3月、株式会社人機一体に転職。一番好きなロボットはZガンダ ム。購入したがまだ組み立ていないプラモデルは100 箱以上ある。

金岡博士(代表取締役 社長)プロフィール
専門は、パワー増幅ロボット、マスタスレーブシステム、飛行ロボット 等。マンマシンシナジーエフェクタ(人間機械相乗効果器)という概念 を独自に提唱し、十年来一貫して、その実装技術を研究・蓄積してきた。 2007年、株式会社人機一体の前身であるマンマシンシナジーエフェク タズ株式会社を設立。2015 年より現職。また、立命館大学 総合科学技 術研究機構 ロボティクス研究センター 客員教授も務める。博士(工学)。

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