ホーム NEWS 2020ニュース 2020参加企業紹介5 ー株式会社アグロデザイン・スタジオー

2020参加企業紹介5 ー株式会社アグロデザイン・スタジオー

359
0

株式会社リバネスが企画するキャリアディスカバリーフォーラム(2020年6月開催)に参加が決定している企業について紹介します。

今回は、株式会社アグロデザイン・スタジオについて紹介します。

化合物をデザインする技術で地球環境を守る
株式会社アグロデザイン・スタジオ 代表取締役社長
西ヶ谷 有輝 氏

農薬というと,作物を食べてしまう虫や病原菌を殺虫・殺菌するものを思い浮かべるかもしれない。株式会社アグロデザイン・スタジオの西ヶ谷有輝さんが開発中の硝化抑制剤という農薬は,畑には必要な「硝化菌」をねらっている。一研究者だった西ヶ谷さんに起業を決意させたのは,自分の技術で地球温暖化問題を解決しようという思いだった。硝化菌の働きを邪魔することと地球温暖化の解決がどのように結びつくのだろうか。

硝化抑制剤って何?

硝化抑制剤は簡単に言えば,土の中にいる硝化菌を殺菌する農薬である。殺菌するのだから悪い菌なのかというとそんなことはない。土中の窒素肥料から,植物の栄養になる硝酸をつくり出す大切な菌だ。しかし,硝化菌の働きが強すぎると硝酸をつくりすぎて植物が吸収しきれずあまってしまう。せっかくまいた肥料の半分以上が植物の栄養に使われず,地下水へ流れたり,温室効果ガスである亜酸化窒素になって大気に出て行ってしまうとも言われている。さらに,硝酸による地下水汚染は酸素欠乏症の原因になるため問題視されている。硝化菌が硝酸をつくりすぎることが環境破壊にもつながっているのだ。そのため,硝化抑制剤を畑にまいて硝化菌を殺菌して数を減らし,肥料が硝酸に変わる速度を落とす。植物の硝酸の吸収速度に合うように調整するのだ。

酵素の働きを邪魔して殺菌する

西ヶ谷さんが開発中の硝化抑制剤がねらうのは,硝化菌が使う酵素だ。硝化菌は窒素肥料から亜硝酸を経て硝酸をつくり出し,同時に自分が生きていくエネルギーを得ている。この亜硝酸を生み出す酵素を働けなくすれば,硝化菌はエネルギーが得られなくなり死ぬ。酵素は特定の物質とだけ結びつき,その物質を変化させる触媒の役割を担う。結びつくときに大事なのは「かたち」で,組み合わせる酵素と物質のかたちが一致しないと反応しない。この性質を利用して,硝化菌の酵素に結びつくが反応はしない人工の化合物を見つけ出し,さらにぴったり結びつけられるように加工して,酵素が働かなくしようという作戦だ。「最初は全然いい化合物も出なくて,何度も神社で『次は効果が高い化合物が取れますように』と祈りました」という。西ヶ谷さんは,候補となる20万種類もの化合物を酵素にかけ続け,2年かけて,今までの硝化抑制剤の100〜1万倍ほどの効力をもつ化合物を得た。

地球温暖化を解決する使命感

西ヶ谷さんが硝化抑制剤に注目したのは,農薬なのに社会課題を解決できると気づいたからだった。最も強く心を動かされたのは,自身の硝化抑制剤が地球温暖化の防止に役立つかもしれないと感じたことだった。硝化菌によって無駄になる窒素肥料が少なくなれば,窒素肥料の製造に必要な石油の使用が少なくて済む。石油の使用を減らすことで,二酸化炭素の大気中への放出も減る。「温暖化を解決したいと誰しも思っているが,解決する手段は誰しもがもっているわけではない」。しかし,開発中の硝化抑制剤が地球温暖化解決の手段になると気づいたとき,「使命感というかうれしさのようなものを感じました。みんなやりたいけどできないことを自分ができる可能性がある。これはやらなきゃいけないだろう」と覚悟が決まった。


▲硝化菌(Nitrosomonas europaea) 由来の硝化酵素 Hydroxylamine oxidoreductase (HAO) 。硝化に重要な酵素であり,中央に見える硝化反応が行われるポケットをふさぐ薬剤をつくることで,硝化作用を止めることが可能。

必ず農薬を届けるという決意の起業

西ヶ谷さんは2018年3月31日に株式会社アグロデザイン・スタジオを設立し起業家になった。会社では化合物を見つけるだけでなく,化合物のかたちを酵素にぴったりに合うようつくり変え,農薬をつくっていく。かたちをつくり変えるので「デザイン」というキーワードを会社名に入れた。大学や研究機関の研究者という立場であれば,化合物を得たことがひとつの成果になる。しかし,西ヶ谷さんは起業家として自分の手で農薬を創り,届けてみたくなったのだ。硝化抑制剤の販売にたどり着くまでに,植物や土壌にまく実験をする必要もある。実験を実現する資金も必要だ。起業をすると,研究費以外の資金を集め,今の研究室でできること以上のことを自分で試していける。「薬を創るなら一生にひとつでも販売までこぎつけよう」と意気込む。西ヶ谷さんの硝化抑制剤が販売され,世界中で使われる未来に期待している。

※上記内容はリバネスの中高生のための研究キャリア・サイエンス入門冊子「someone vol.43(2018年6月発行)」のコーナー「私のみらい創生記」に掲載されたものです。

 

<キャリアディスカバリーフォーラム2020 開催情報>

2020年6月20日(土)10:00-18:00
場所:TKP市ヶ谷カンファレンスセンター5F

参加登録フォームはこちら(リバネスIDへのログインが必要です)

返事を書く

Please enter your comment!
Please enter your name here