ホーム フォーラム 2020 研究者のベンチャーでのキャリアって?研究開発型ベンチャーの代表に聞いてみた

研究者のベンチャーでのキャリアって?研究開発型ベンチャーの代表に聞いてみた

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研究者はベンチャー企業でどのように活躍できるのか。自身も博士卒業後に研究開発型ベンチャーに参加し、今は代表を務める研究者に話を聞いた。

会社のことを自分ごととして面白がれるかが活躍の場を発見する秘訣

株式会社セルファイバ 代表取締役・社長 柳沢佑さん

「キャリアデイスカバリーフォーラム」では、新たな活躍の場としてベンチャー企業のキャリアも知ることができる。採用フェーズに達したベンチャー企業でどのようなキャリアを描けるのだろうか。2015年に東京大学の技術から創業し、細胞を繊維状に加工することで医療や食糧生産など様々な場所で活用することを目指す株式会社セルファイバの代表に、自身の経験を元に語ってもらった。

自分だけができることを見つけた

 柳沢佑さんは、学部卒業後、一度企業に就職をしたが、一念発起し博士課程に進んだ。「人がやっていないことをやりたいという気持ちが強かったが、周りが修士や博士の人が多い職場で自分だけができることがわからず、苦しかった」と当時を振り返る。セルファイバと出会ったのは博士論文を書いている時期だった。研究を世の中に送り出すベンチャーに興味があり、すでに研究職での採用も決まっていたが、1つの領域を深掘りしていくだけでは自分が考えるくらいのことは誰かがやっているのではという気持ちが拭えなかった。セルファイバの技術はバイオと工学の融合領域にある。調べてみると、研究の融合領域では重要なことで手付かずになっていることがたくさんあった。専門の化学とはぴったり一致していなかったが、自分の持ち前の好奇心の元に掘り下げることができれば、人がやっていないこともできるのではないかと考えた。自分のやりたいことと重なる場所を求めてたどり着いたのだ。

自分ごとが広がり、研究+経営者に 

最初は研究員として入社したが、のちに代表取締役・社長に就任した。経営者になるとは思いもしなかったという。しかし、研究を進めていくうちに、経営にかかわることも一緒に進めて行かないと事業の立ち上げに必要なスピードが出せないことに気づいた。ベンチャー企業では、数字の目標をつくり、実現のため具体的に販路を開拓しながら、研究資金を集めるなど、経営者任せでは進まないのだ。「経営というと、なんでもできないといけないと思いがちですが、未開拓な領域を経験する過程では、わかっていることとわからないことを明確にするることが重要で、それは研究と同じでした」。必要に迫られて会社を自分ごとにして行った結果、活躍の場が広がったと言える。「研究者は社会貢献に直接かかわりづらい構造があるが、自分が作った技術が人に使ってもらえるところまでを自分たちで進められることがベンチャーの魅力。研究を社会に出すまでに困難なことはあるけれど、それを面白がってくれる人は活躍の場が広がると思います」。

仲間を増やし、研究を加速して行きたい

 創業から4年経ち、研究を加速していく段階にきた。そこで、新たな仲間を求めてキャリアデイスカバリーフォーラムにも参加したのだ。「イベントでは自分とちゃんと向き合おうとしている人が多かった」と柳沢さんは話す。「ブースでは研究を軸に自分のやりたいことをお話してもらいました。専門性とマッチするかに限らず、過去、今、未来の自分をしっかり語れる人は、きちんと自分と向き合って頼もしいと感じました。自分のやりたいこと重なる場所だったら、ベンチャーにも来て欲しいなと思いましたね」。イベントでは、実際に入社を検討した人も現れ、分野は異なるが、蛍光イメージングの専門家との共同同研究も生まれそうだという。

やりたいことが重なれば、自分で考えて動けるようになる

 「ベンチャーの仕事はスピード感が求められます。日々状況が変わっていく中、会社の動きを見て、自分で考えながら動けることが必要となります」。自分で考え、動けるようになるために必要なことが、自分のやりたいことが会社と重なっていることだという。「ベンチャーは組織として整っていないこともたくさんあるから、格好悪いところも、地味なこともたくさんある。その成長を面白がって一緒になんとかしようと思ってくれると、大きな企業ではできない面白い経験ができると思いますね」。柳沢さんが自分ごとを広げていったように、自分のやりたいことと重なり、会社の成長を自分の成長として面白がれる場を見つけることが、活躍の場を見つける秘訣と言える。

柳沢佑(やなぎさわ ゆう)さん プロフィール

東京薬科大学卒業後、株式会社リバネスに入社。退職して、東京大学大学院工学系研究科で博士号を取得して、東京大学総長賞などを受賞後、株式会社セルファイバへ入社。AMED「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業」で研究開発代表者を務める。

<2020年度キャリアデイスカバリーフォーラム>
2020年6月20日(土)10:00-18:00 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター5F
詳細・申し込みフォーム https://cdf.lne.st/

 

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