CVCA(Customer Value Chain Analysis)は、事業やサービスを検討する際に、どのような価値の連鎖が起き得るのかを可視化するためのツールです。研究者が使うことで、研究の知見を誰にどうやって届けていけるのかを具体的に考えることができます。研究を社会に届けるという視点から研究の方向性を捉え直したり、テーマを進める上で考慮すべき新たなポイントを見いだすことにもつながるかもしれません。
研究の背景や目的に疑問を感じている人や、自分の研究の届け方を深掘りしてみたい人は、こちらから記入シートをダウンロードするか、以下の事例を参考に、紙とペンを使って、自分なりのCVCAを書き進めてみてください!
<CVCAの書き方>
▲ CVCAの構成要素
CVCAを作る際の構成要素は、大きく分けて3つです。自分・ターゲット・関連企業などの「関与者」、関与者同士を矢印で結び提供するものを書き出す「関係性」、関与者が感じている課題感やニーズを書き出す「心の声」となっています。これらを組み合わせることで価値の連鎖を可視化していきます。
はじめは、自分が知っている範囲の「関与者」を書き出していきますが、関与者が考える「心の声」を、直接のインタビューや、インターネットの情報などを参考に知り、足りない要素を加えていくことで、研究の新しい届け方を考案したり、自分の研究で工夫できる点を見つけたりすることに役立ちます。
<CVCAの活用事例>
腸内細菌研究者〜千葉のどかさん(東京工業大学大学院 生命理工学院 修士2年)〜の場合
ステップ1:思いつく限りの「関与者」との関係を書き出してみる。
千葉さんは、CVCAの書き方に倣って、まずは自分の研究から思いつく限りの「関与者」と、その「関係性」、「心の声」を全て書き出してみました。
これだけでも、自分の研究と関わる可能性のある「関与者」との意外な関係性に気づくことができました。
ステップ2:自分が研究を届けたい相手(ターゲット)を決め、「関係性」と「心の声」を深掘りする。
千葉さんは、思いつく限り書き出した中でも、特に、自分の腸内細菌の研究成果が、「体質が原因で、食生活にフラストレーションを抱えている人」に届く形を考えたいと思い、この人を「ユーザー(ターゲット)」とする、研究の届け方を抜き出して考えてみることにしました。
まずは、研究者である自分と、腸内細菌の知見を活用する企業と、ユーザー(ターゲット)のみを、抜き出してCVCAに書き出しました。
しかし、ユーザーの声を想像すると、ユーザーが起業家から腸内細菌のデータを得ても、具体的にどう食生活に活かせば良いのかわからない状態であることに気づきました。
そこで、検査結果を日常の食事の選択に繋げてくれる食事管理アプリをテーマに、「関与者」を増やしながら、ユーザーが腸内細菌のデータに価値を感じるようになる方法を考えていきました。腸内細菌検査事業者が集めたデータから、ユーザーに最適な食事管理をアプリで届ける企業を関与者に加えました。
しかし、この場合、ユーザーがサンプルの提供だけでなく、アプリの利用のためにお金を払う必要があります。
そこで、インターネットの情報を参考に、ユーザーの所属先企業を「関与者」としてCVCAに書き加えることで、ユーザーに手軽な腸内細菌に合わせた食の選択を届けるようなモデルが浮かび上がってきました。
ステップ3:「関係性」や「心の声」がわからないときは、周りの人や実際の「関与者」にインタビューを行う。
実際に調べてみると、企業が『健康経営』を掲げ、社員の健康管理のシステムやサービスを導入している事例がたくさんあることがわかりました。しかし、千葉さんには、ユーザーの所属先企業が、なぜ、どのような形で社員にアプリを提供するのかがわかりませんでした。それがわかれば、使う側の視点に合わせて、研究の方向性を考えるヒントが得られるかもしれません。千葉さんは、社員の健康管理アプリサービスを導入している企業の方に話を聞きに行くことにしました。
是非、皆さんも記入シートか、紙とペンを使ってCVCAを書き進めてみてください。記入シートのダウンロードはこちらから。